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ランチョンⅠ
LS-1-1
視野狭窄患者さんのロービジョンケア
~自動車運転問題を考える~

○国松志保
東北大学医学部眼科学教室

日本の普通自動車運転免許取得・更新にあたっては、中心視力が良好な場合、視野検査は行われず、高度な視野狭窄があっても、運転免許を取得することは十分可能である。しかし、末期緑内障患者や網膜色素変性症患者の中には、「左右の安全確認をしたのにも関わらず、側方から突然来た自転車と衝突した」など、視野狭窄による安全確認の不足が原因と疑われる事故を起こしている。また、2013年7月には、交通死亡事故を起こした40才の網膜色素変性症患者の刑事裁判で無罪とする判決があり、免許更新時の視野の検査をする必要性が言及され、大きな社会問題の一つとして注目された。
ロービジョン患者の管理・教育を考えるにあたっては、公共の交通網の乏しい地方都市では、自動車運転の可否が、Quality of lifeを維持できるかどうかに関わっている。そのため、視覚障がい者の視機能と自動車事故との関連性について検討することは、非常に重要である。
われわれは、自治医科大学附属病院眼科において、ロービジョン外来受診患者119例を対象に運転実態調査(運転歴、事故歴、運転時間、運転の目的について聴取)を施行したところ、119例中54例に運転歴があり、12例(10.1%)は、ロービジョン外来受診時に運転を継続しており、12例中4例が過去5年間に事故を起こしていた。また、ロービジョン外来受診患者のうち、中心視力が良好であるものの、高度の求心性視野狭窄をきたす患者に、運転の危険性を認知させる目的でドライビングシミュレータ(DS)を導入したところ、標識や信号は認識できるものの、側方からの車や子供の飛び出しに、全く気づかず衝突した場面が多く、DSは患者に自分の運転の危険性を自覚させるのに有用であった。
本講演では、DSを用いた研究の最新情報を紹介し、視覚障がい者の自動車運転、特に運転を継続している場合の対応について考えたい。

【略歴】
1993年 千葉大学医学部卒業、東京大学医学部眼科・研修医
1994年 東京大学医学部分院眼科・助手
1995年 国保旭中央病院・医員
1996年 日本医科大学眼科・助手
1998年 東京大学医学部眼科・助手
2005年 自治医科大学眼科・講師
2012年 東北大学病院眼科・助教 自治医科大学眼科・非常勤講師
2013年 東北大学病院眼科・講師

共催:日本アルコン株式会社

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