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特集演題
FL-1-2
教育機関における合理的配慮の現状と課題
-教科書のアクセシビリティと大学における支援を中心に-

○中野泰志
慶應義塾大学

中央教育審議会では、「合理的配慮」を「障害のある子どもが、他の子どもと平等に『教育を受ける権利』を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」であり、「学校の設置者及び学校に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義している。そして、学校への入学の出願の受理、受験、入学等を拒むこと等は不当な差別的取扱いとし、校内の物理的環境への配慮、移動の支援等の人的支援、教科書・教材等を点訳・拡大する等の意志疎通の配慮、試験の際に電子機器等を用いることを認める等のルール・慣行の柔軟な変更等を合理的配慮の例として示している。
教科書や教材等を拡大したり、音声や点字にしたりすることは、視覚障害児にとって重要な配慮だと考えられるが、拡大・音声・点字に変換するために高価な機材や高度な知識・技術等が必要になると、過度の負担になる可能性がある。そこで、文部科学省では、この課題を解決するための一つの方策として「教科書デジタルデータを活用した拡大教科書、音声教材等普及プロジェクト事業」や「学習上の支援機器等教材研究開発支援事業」を実施してきた。本報告では、これらの事業で実践されてきた視覚障害や発達障害等に配慮した教科書デジタルデータの活用に関する最新情報や教科書・教材閲覧アプリ「UDブラウザ」の開発・活用状況等について紹介する。
障害者差別解消法が施行されると、国公立の大学等では障害者への差別的取扱いの禁止と合理的配慮の不提供の禁止が法的義務となり、私立の大学等では障害者への差別的取扱いの禁止は法的義務、合理的配慮の不提供の禁止は努力義務となる。本報告では、文部科学省高等教育局長決定により開催された「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」の報告、大学入試における合理的配慮に関する最新情報、日本学生支援機構や全国高等教育障害学生支援協議会等の全国的な動向について紹介する。

【略歴】
1984年 東京国際大学教養学部人間関係学科卒業
1988年 慶應義塾大学大学院社会学研究科修士課程(心理学専攻)修了
1988年 国立特殊教育総合研究所研究員
1997年 慶應義塾大学経済学部助教授
2003年 東京大学先端科学技術研究センター特任教授
2006年 慶應義塾大学経済学部教授

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