文字サイズ: 特大
文字と背景色: 白黒 白黒反転 黄色黒 黄色青 白青 青黒 緑黒
特別講演
SL-2
視覚障害者の音活用の未来

○佐々木幸弥
武蔵野美術大学

視覚障害者にとって音を聞くことは、物に触ることと同様に、情報取得手段としての重要な役割を果たしている。しかしながら音には形が無く、あまりにも身近であるがゆえに、その存在は認識されにくい。加えて近年は様々な支援技術の開発や支援制度の充実により、以前に比べて視覚障害者の音への依存度は減少し、音を活用するスキルの低下が懸念されている。
視覚障害者が音を活用する代表的な場面としては、空間認識や移動支援、そして情報取得が挙げられる。視覚障害者が歩行する際、自身の足音や白杖を突く音の反射を聞いて空間を認識する。公共空間ではサイン音が多用され利便性が高まっている反面、無秩序に配置された音の洪水によって、足音や白杖の音も聞こえない、視覚障害者にとって逆に危険な音空間も多数みられる。
さらに一日中鳴り響く過剰な音によって、音の不要な人への影響も懸念されている。情報取得手段としては録音再生技術が中核となっており、近年めまぐるしく発達したIT技術を伴って、さらに利便性が高められている。
本講演ではこれらの実例を紹介した上で、音の特徴や視覚障害者と音との関わりを考える。音に対する意識を高め、大切に活用することによって、音による視覚障害者の支援が、共生社会に向けたサウンドデザインとなることを目指したい。

【略歴】
1987.3 千葉大学工学部電子工学科卒業
1987.4 ヤマハ株式会社入社
2004.4 武蔵野美術大学非常勤講師

戻る