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市民公開講座
LP2-1
ユニバーサルデザイン・プラスの発想
~新しい楽しさと便利さを加えて~

○谷川憲司
静岡文化芸術大学

ユニバーサルデザインの概念が提唱されて30年になる。その間に高齢化は進み、ユニバーサルデザインの必要性はますます高くなっていると考えられる。では、ユニバーサルデザインへの期待や関心は高まっているだろうか。残念ながら、2000年前後に各地の自治体で取り組みが始まり国際会議開催等で盛り上がったのに比較すると、今は少し精彩を欠いているように見える。
多様な人の特性に配慮して、誰もが使いやすいモノやサービスを提供することがユニバーサルデザインの基本理念である。ところが、不便さの解消・ネガティブなファクターをなくすという側面において、不便さを感じていない人にとっては実感がなく他人事になってしまうきらいがある。ユニバーサルデザインは障害者のためのもので自分に関係ないとする偏見が払拭できない。
しかし、ユニバーサルデザインのもたらすものは不便さの解消だけではない。人の多様な特性を超えて使うことを追求すると、新しい使い方や新しい機能を発見することができるのである。
一例をあげると、スマートホンの読み上げ機能と音声認識は、視覚に障害のある人の操作を可能にしたばかりでなく、一般者の運転中や手の話せない状況など、これまで不可能だった状況での操作を可能にしている。さらに複雑な操作をスキップできるので、高齢者や一般者が大変使いやすいものになった。
このように、人の多様な特性や状況に着目して解決を図ったことによって、誰もが使えることだけでなく、普段気がつかないような新しい機能や新しい魅力を生み出すことができる可能性がある。そこでプラスのファクターを生み出すユニバーサルデザインを「ユニバーサルデザイン・プラス」と名付けた。
超高齢社会で世界に先駆けている日本だからこそ、ユニバーサルデザインで社会を充実させると同時に、ユニバーサルデザイン・プラスの発想によって、新しい競争力、産業の活性化に結びつけていくことを期待したい。

【略歴】
1977年 京都工芸繊維大学意匠工芸学科卒
1977年 セイコーエプソン株式会社(当時:株式会社諏訪精工舎)入社
1977年~ 同社ウオッチ事業部・・・(ウオッチデザイン)
1981年~87年 同社パリ駐在事務所・・・(欧州市場トレンド調査、デザイン開発)
1990年~ 同社開発本部、デザインセンター・・・(新商品開発、人間中心設計)
2000年~ 同社ウオッチ事業部・・・(商品企画、デザインマネージメント)
2011年~ 公立大学法人静岡文化芸術大学教授・・・(プロダクトデザイン、ユニバーサルデザイン)
日本インダストリアルデザイナー協会会員、日本デザイン学会会員、日本感性工学会会員
静岡県UD推進委員会委員長、共用品ネット副代表

共催:公益社団法人日本眼科医会(社会適応訓練講習会)

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